(日本経済新聞電子版)

Financial Times

アルゼンチンで24日、投資資金が大量に流出した。深刻な不況と歴史的な高インフレを受けて、10月に予定される大統領選でポピュリズム(大衆迎合主義)が息を吹き返すことになるとの懸念が強まったためだ。

4日、政府の経済政策に反対してブエノスアイレス市内をデモ行進するアルゼンチンの労組メンバーら=ロイター

4日、政府の経済政策に反対してブエノスアイレス市内をデモ行進するアルゼンチンの労組メンバーら=ロイター

ドル高を背景に新興国の資産が売り込まれているが、アルゼンチンでは左派のクリスティナ・フェルナンデス前大統領の支持率が上昇し続ける中、同国の債券、株式、通貨が著しい急落に見舞われている。

米国債とアルゼンチン国債の利回り格差は24日、1ポイント近く拡大して9.56%に達し、2014年2月以来で最高を記録した。一方、通貨ペソは約3.5%下落した。

「今は大統領選があらゆることに影を落としている。アルゼンチンは後戻りするのかと世界が疑心暗鬼になり、(そのために)カントリーリスクが上昇し、(投資家は)慎重姿勢を取っている」。マウリシオ・マクリ大統領はこの日、利回り格差について地元のラジオ局でこう語った。「しかし、それは間違いだ。アルゼンチンは後戻りなどしたくはない」

国際通貨基金(IMF)は18年の通貨危機の際、アルゼンチン向け融資枠を過去最大の563億ドル(約6兆3000億円)まで拡大した。その時の条件として求められた通り、アルゼンチンは政府債務の削減を進めている。にもかかわらず、100年満期のアルゼンチン国債価格は過去最安値の70セントに沈んでいる。この国債が発行された17年には、マクリ政権の改革プログラムに対して投資家の期待が高まっていた。

■「悪循環」

「アルゼンチンは現在、悪循環に陥っている。経済がすぐに安定するような流れはみえず、インフレは収拾がつかない動きを示している。そのために資金をドルに換える動きが広がり、クリスティナ・フェルナンデスが大統領に返り咲くのではないかと警戒されている」と、米資産運用会社ヌビーンのマネジングディレクター、アヌパム・ダマニ氏は指摘する。

政府が先ごろ発表した経済政策については「マクリ大統領が頼る価格統制は窮余の策の印象が拭えず、国内外で懸念が高まっている」という。アルゼンチンではインフレ率が年率55%と過去最高に達しており、政府はその影響の緩和対策(編集注、企業に対する生活必需品の価格据え置き要請)を打ち出した。

来る大統領選の行方については、アルゼンチンの世論調査会社イソノミアがこのほど、2回目の決選投票でフェルナンデス氏がマクリ氏に勝つとの調査結果を公表したことを受けて、不透明性がさらに高まった。一方、エリプシスの公表した調査結果では、フェルナンデス氏はまだ出馬を正式表明しておらず、情勢はなお拮抗していて判断がつかないとしている。

国債売買のベテランアドバイザーによれば、アルゼンチン市場を現在の窮状に追い込んだ原因は、ショック療法よりも段階的な経済調整を志向するマクリ氏の政策にある。「そのような政策は間違いだ。これまでその路線を試して成功した例はない」

「アルゼンチンは嵐の真っただ中にいる」というのは、米バノックバーン・グローバル・フォレックスのチーフ市場ストラテジスト、マーク・チャンドラー氏だ。「世界が厳しい目を注いでいるうえに、脆弱な国内機関と稚拙な政策運営が重なり、事態はさらに悪化している」と話す。

「18年にリラ急落に見舞われたトルコと同様、アルゼンチンは今回のドル急騰以前から厳しい情勢に直面していた。マクロ経済の見通しは、今なお投資家にとって期待が持てるものではない」とチャンドラー氏は指摘する。「アルゼンチンペソとトルコリラはどちらも多くの指標で割安となっているが、買いを集めるには相当安くなる必要がある。まだそこまでには至っていない」

ドル高ではアルゼンチンの債務と通貨にとっての逆風が続くことにもなる。

ドル指数は24日午後の取引中に0.5%上昇し、ほぼ2年ぶりに98の節目を超えて98.071を付けた。

By Benedict Mander, Richard Henderson and Colby Smith

(2019年4月25日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

投稿者 荒尾保一