(日本経済新聞)

【サンパウロ=外山尚之】ブラジルとアルゼンチンの通貨を統合する構想が持ち上がっている。両国とも不安定な為替相場が経済の重荷となっており、経済統合を深め通貨の耐性を高める狙いだ。ただ議論は始まったばかり。通貨統合の先駆者である欧州連合(EU)もユーロの運用に苦労しており、実現に向けたハードルは高い。

ブラジルのボルソナロ大統領(左)とアルゼンチンのマクリ大統領(右)(6日、ブエノスアイレス)

ブラジルのボルソナロ大統領(左)とアルゼンチンのマクリ大統領(右)(6日、ブエノスアイレス)

ブラジルのボルソナロ大統領は6日夜、訪問先のブエノスアイレスで両国の共通通貨「レアル・ペソ」構想について「単一通貨という夢に向けた最初の一歩だ」と発言。「(欧州で)ユーロが発生したように、レアル・ペソがここで発生することも可能だ」と述べた。

昼の首脳会談後の共同声明で言及されなかった通貨統合構想だが、ブラジルのゲジス経済相が両国の経済関係者が集まる会合で披露したことで火が付いた。ゲジス氏は「アルゼンチンがとても興奮していた」と明かした。

アルゼンチンの有力紙ナシオンは財務省関係者の話として、同国のドゥホブネ財務相が4月にブラジルを訪問した際、この議論が持ち上がったと報じた。

両国とも昨年から通貨が対ドルで弱含んでおり、経済が落ち込む中、通貨安対策が喫緊の課題となっていた。特にアルゼンチンでは昨年来の通貨下落を受け、自国通貨を放棄し米ドルを法定通貨として採用する「ドル化」も公の場で議論されるほどだった。

ドゥホブネ氏は7日、訪問先の日本で記者団に対し、「数カ月前に議論を始めた」と明かした。構想段階だとしながらも、「アルゼンチンとブラジルがより統合するためのビジョンを共有している」と述べた。

両国はこれまで南米南部共同市場(メルコスル)を通じ域内の貿易を自由化するなど、経済統合を進めてきた。2015年から16年にかけ両国で相次ぎ右派政権が誕生してからは、域外国や地域との自由貿易協定(FTA)交渉を積極化させるなど、開放経済への転換を積極化している。

仮に両国が通貨を統合すれば、人口2億5000万人、国内総生産(GDP)2兆3800億ドルの巨大経済圏が誕生することとなるが、実現に向けたハードルは高い。ブラジル中央銀行は7日、「アルゼンチンとの通貨統合についてまだ研究していない」とする声明を発表した。短期的に為替相場に与える影響を懸念してのものだ。

アルゼンチンでは10月27日に大統領選挙を控えており、4年ぶりの政権交代を目指す左派陣営と再選を狙うマクリ大統領が激しく競っている。仮に左派陣営が勝利すれば、今回の通貨統合構想自体が破談になることは間違いない。

投稿者 荒尾保一