(日本経済新聞)

アルゼンチンが外資による資源投資を拡大するため、改革路線を加速させている。2001年のデフォルト(債務不履行)を受け誕生した左派政権下で投資は冷え込んだが、15年12月に就任したマクリ大統領は外資誘致のための法改正や法人税引き下げに取り組む。電気自動車(EV)に不可欠なリチウムに加え、シェールガス・オイルでも世界有数の資源量を誇るだけに、投資環境の改善にかかる期待は大きい。アゼンチンが外資による資源投資を拡大するため、改革路線を加速させている。石油・ガス・リチウムなどを埋蔵するが、左派政権下で開発は遅れていた。EVブームのなか、世界中から注目と投資が集まるアルゼンチンの塩湖を訪ねた。

高度4000メートルの高地でリチウムを精製する(アルゼンチン北西部カタマルカ)

高度4000メートルの高地でリチウムを精製する(アルゼンチン北西部カタマルカ)

アルゼンチン北部カタマルカ。小型飛行機に乗り、標高4000メートルの山々を眼下に進むと、鮮やかな水色の湖と真っ白な砂地が突如視界に入った。オンブレ・ムエルト塩湖だ。リチウムを豊富に含む塩湖のほとりでは、リチウム3大メジャーの一角、米FMCが充電池の原材料となる炭酸リチウムを精製している。

世界的なEV導入機運の高まりもあり、リチウムの需要は急拡大。FMCは3億ドル(約320億円)を投じ、生産能力倍増のための造成作業を進める。オンブレ・ムエルト塩湖から約200キロメートル離れたオラロス塩湖でも、豊田通商が出資先の豪資源会社と生産増強に取り組む。周辺では中国企業などもリチウム投資に名のりをあげる。

オンブレ・ムエルト塩湖からくみ上げた水からリチウムを精製する(アルゼンチン北西部カタマルカ)

オンブレ・ムエルト塩湖からくみ上げた水からリチウムを精製する(アルゼンチン北西部カタマルカ)

投資案件が浮上するのはリチウムだけではない。西部ネウケン州のバカムエルタ鉱区では、石油メジャーを中心に外資系企業によるシェールガス・オイルの探査が進む。同鉱区は世界有数の埋蔵量が期待されている。

EVブームや原油価格の回復に加え、マクリ政権の改革路線も投資を後押しする。マクリ氏は就任早々、鉱物に対する輸出税を撤廃。昨年は鉱山法の改正を実施し、資源開発に関わるロイヤルティーの上限を設定した。法人税も段階的に35%から25%に下げる。

10年以上続いた左派政権の影響で、アルゼンチンの資源開発環境は周辺国に比べ大きく出遅れていた。デフォルト後、左派政権は反市場経済的な政策を推進した。石油やガスの価格統制に加え、恣意的な許認可で外資系企業を攻撃。12年にはスペイン石油大手子会社のYPFの国有化を強行した。

資源開発コンサルの米ベーリ・ドルベアが発表する15年の鉱山投資環境ランキングで、アルゼンチンは全25カ国中22位。一方、周辺国のチリは4位、ペルーは6位と大きく差を付けられていた。近年、日本企業を含む、海外企業の資源投資はチリ、ペルー両国に集中する。

2月19日にブエノスアイレスに日本の商社やプラントメーカーなど約15社を集めて開催したセミナーで、エネルギー・鉱業省のレドンド副大臣は「今後、チリやペルーと遜色ない水準まで環境を改善する」と宣言した。製造業の誘致が思うように進まない中、資源分野にかかる期待は大きい。

セミナーに参加した日本企業からはマクリ政権の改革路線を評価する声が上がる一方、脆弱なインフラや労働組合の影響力が強い硬直的な労働制度、投機的とされる水準の国債格付けを不安視する声もあがる。

マクリ政権はこうした声を払拭するため、民間資金を活用したインフラ整備や労働法改革、財政再建に取り組む。足元の資源価格という追い風の中、手を緩めずに改革を加速できるかどうかが資源大国・アルゼンチンの復活を左右する。

(カタマルカで、外山尚之)

投稿者 荒尾保一